今回は徳川大坂城制作記事から少し離れて、気になっていたジオラマ展を見てきたので、その感想の記事といたします。
通天閣3階に展示してあるルナパーク(旧通天閣の周辺の公園)ジオラマなどの作者南條亮氏の作品で、2001年から全国各地で展覧会を開催された「人間、この愚かですばらしきもの展」とタイトルされていた作品群(当時テレビなどでも紹介されたかと思います。)が、現在、大阪府泉佐野市にある「いこらもーる泉佐野」というショッピングモールに設けられた「南條亮ジオラマ記念館」に常設展示(入館無料)されているのです。
懐かしの昭和というタイトルが付けられていますが、作者が「ごあいさつ」の中で、二十世紀「私たちが歩んできた時代と生きてきた姿をもう一度見つめ直すことは決して無駄ではない」との思いから、庶民の生きざまを人形の姿を通してドキュメントジオラマとして制作したと書かれています。
ただ、明治から戦後高度成長期までの100年を作る予定を持っておられたものの、「体力年齢から作品を構想通り完成させることが難しくなりました」とされています。
この方のジオラマの人形は、喧嘩をしていたり、仕事をさぼったり、怒鳴ったり、なにか昔へのノスタルジーだけでない、生身の生態で表現されています。
また、顔立ちもお上品なものばかりでなく、近所や身近にいそうな、やや面白い顔立ち、さらにそれぞれの表情を豊かにするよう約5頭身程度のデフォルメが加えられていて、人間の「愚かですばらしき」姿を表現されています。
各シーンを切り取って、じっくり見てみると、それぞれ、なんらかのドラマが考えられていて、思わずニヤリとさせてくれます。
八百屋の店先に並んだ野菜や果物も良く作り込まれています。
左の建物が銭湯で、右がかき氷屋です。風呂屋に燃料となる木炭を馬で運び入れています。もはや懐かしい風景というよりかは昔の生活風景はこうだったという歴史資料となりますね。作者はかなりのリサーチをされて風景の再現をされています。
そして、銭湯から出てくるオッサンの表情が味のあるこれですから、たまりませんねえ。大阪人はこういう感じの人を面白いと思う感性を持っています、私なんぞにもよく分かります。
これは、明治の道頓堀の風景を再現されています。
右は道頓堀の料理屋に、魚が仕入れられ、なにやら盆栽も運ばれてきたシーンでしょうか。
隣の料亭の2階では昼間から酔ったのか踊る客もいて、騒がしいようです。とにかく凄まじく作り込まれています。
私の感想ですが、ジオラマという名称でこの作品は説明されてしまいますが、例えば、切り取られた歴史的事件の再現(勝手な思い込みや想像)シーンで作られたジオラマなどではなく、明治からの街と人間の営みの風景を、人間の普遍性をも表現する壮大な歴史叙事詩作品として残そうと南條亮氏は思い描いておられるのだろうと思います。そういう意味では、絵画や音楽などの芸術と同じ高みに至った作品群であると感じたところです。
これらの作品はいずれも撮影可とされており、また、SNSなどでの拡散希望とされており、今回、自分で撮影した写真で紹介させていただきました。近くにお立ち寄りの際は是非とも見学されるべきかと思います。また、よくよく観察して人形達の個性とそのドラマを見つけてみるのは楽しいと思いますよ。