童友社のDX広島城の制作の記事を続けます。今回は天守の改造部分の説明を中心に天守の完成にもっていく過程の紹介といたします。
この天守の改造はロボット、フィギュアをやっておられる「べに工房。」のべにたまさんの広島城ディティールアップ記事を参考にさせていただいています。
まずは、キットでは再現されていませんが、旧天守図面で確認すると、天守一重目壁の下見板張りの仕様が、縦板張で、二重目以上と異なるため、キットの下見板を削り取る作業を行いました。通常下見板張りでは、下の板(羽目板という)に上の板を被せるように重ねていきます。(これを鎧張りといいますが)さらに、この羽目板の上から縦に「押し縁、さらら子」という木材で押さえる形式となっています。ところが、旧天守一重目は、この羽目板が縦に張られていて、羽目板の継ぎ目に縦に押し縁で押さえる形式であるようで、特異な下見板であったようです。
ここの改造は、この広島城プラモデル制作の最大の難所で、イエローサブマリンの0.14mm厚0.5mm幅のプラストライプというプラ材を縦半分に切って0.25㎜幅にして、1本ずつ張り付けていく作業で、なかなか垂直、かつ並行にそろってくれないので疲れ果てました。
次に、キット北面(お堀側の幅広の側面)二重目西寄りの窓で、一重目の窓の上、同じ位置にありますが、旧天守一重目平面図と二重目平面図をよく確認すると窓一つ分西側に寄せなければなりません。同じく西面(お堀側の狭いほうの側面)の二重目の窓も左右ともに窓一つ分外側に寄せなければなりません。(写真ではそれぞれ、キットの窓を切り取って、もうひとつ買ってあるキットから、白いパーツを移植しています。)ちなみに写真で確認する限りでは、広島城に展示してある広島城天守模型も、この二重目北面窓に関しては位置が誤っていると思います。
天守の外見に関する改造はあと一つあります。キットでは四重目屋根が正方形となっていますが、図面で確認すると南北辺と東西辺の長さが74.5:69の比率です。東西の辺の屋根を3㎜切り縮め、最上階(これは正方形)が入るように屋根を一部を削り、屋根裏を4重目の壁に入るように削ることで対応しました。屋根の四方から上がってくる隅棟(すみむね)が欄干の四方の角につながっていないのが分ると思います。
基本の外形ができたので、ディティールアップです。それ以前に正確に塗装するのも非常に大切なのは言うまでもありません。手をいれるために、キットの天守各面から五重目をカットしています。(そもそもキットの廻縁に床板がないので追加するためもあります)天守最上階には、キットにはモールドされていませんが下見板張りがあり、真壁造りで柱や梁も大きな特徴となっており、特に四方の柱は省略できないところです。そして、この広島城キット塗装の最難関は華頭窓の塗りでしょう。小さな面相筆で、色がのっているのかどうかわからないぐらい思い切り薄めた白木色の塗料を少しずつ「のせて」いきます。(まあ、時間かかりますけど、お城の顔の部分なので、じっくりいきたいところです。)
ところで、上記のごとく、いろいろと手を加えて実物の旧天守の城郭模型を作ったのですが、実物と大きく異なっているのは、この華頭窓でして、正直言って図面と比べると一回りオーバースケールです。(悲しい・・・)
私のお城プラモは、下から見上げて撮影することも前提にしていますので、屋根の裏も、けっこう重要ポイントでして、広島城について言えば、古式な方杖(ほおづえ)は追加しておくべきでしょう。キットにもモールドされてはいるのですが、控えめで短すぎるのと、面になっていて棒にはなっておりません。なのですべてカットして、プラ棒で付け替えしました。これもすべての屋根ですので、時間はかかります。
ずいぶん前に見て、見つけることができないのですが、プラモ城郭模型を作成されていた方のホームページにお城プラモデルの作成の何か条かの作法が掲げられていて、そのうちの一つに「鳥衾(とりぶすま)を追加すべし」というのがありましたね。鬼瓦のあたりにドリルで穴を開け、0.5mmの真鍮棒を瞬間接着剤で固定、爪切りで長さをそろえてカットしています。ドリルのあたりをつけるのが難しかったです。
欄干も、キットのものを薄く削り使っていたのですが、ライオンロアというメーカの日本軍艦用汎用手すりのエッチングパーツのピッチが合うことに気づき、2枚重ねで利用することにしました。
各窓の突上げ戸(0.5ミリ厚のプラ板)を各窓に付けていきます。つっかえ棒は、0.3ミリの真鍮棒を切って、これも瞬間接着剤でとりつけています。(写真は突上げ戸のエッジを塗装していないので白いままです。)あと、モールドでは短く飛び出していないので、屋根下の四方に出ている隅木も追加しています。1/350は小さなスケールですが、艦船などのジャンルと比較すると、まだまだ、お城プラモもディティールアップの余地があると思います。小さな城郭模型の世界をのぞき込んで、当時の風景に思いをはせるのは楽しいものです。もちろん作り込みが甘ければ、とたんに興覚めしてしまいますけど・・・