東京マルイ姫路城を見てみる(その4)櫓は引き立て役か?

 購入した東京マルイ姫路城についての記事の続きです。お城プラモを持っている楽しみは、実物の写真などにはないようないろいろな角度から眺めることでしょうか。実在の天守などは、周辺の木々の位置などから、撮影ポイントがだいたい固定されてしまいます。姫路城であれば三国堀から天守を望むものがオーソドックスなものとなっているところです。天守北側は原生林で切れ込んでもいるため、北側から天守を望む写真はとても少ないです。(遠望しているものならあるようですけどねえ)お城プラモならそれを自由に自分の好きな位置から見ることができるです。

 さて、いじわるですが、東京マルイ姫路城の「もうすこし何とかしてほしかった」ポイントの指摘をしていきましょう。天守西側乾小天守下の「水の二門」です。二の櫓(くの字の建物)の天守側の屋根が実物は「入母屋屋根」ですが、プラモのほうは「切妻屋根」でここは違いますねえ。(たぶんグーグルアースでは確認できないからでしょう。)
 次は、見学通路にもなっている「ろの櫓」の形状です。(窓とか再現してほしいところですけど、多くの櫓が「のっぺらぼう」となっています。)角に石落としがありますが、プラモには再現されていません。童友社の姫路城キットはさすがにこういった省略していません。東京マルイ姫路城の一部土塀は、塗装で狭間を表現していますが、櫓の窓についても最低塗装表現をしてほしかったところです。この点はこの製品の最大の弱点であると思います。

 次の写真は、「北腰曲輪」の比較です。さきほど触れたように、童友社の1/380姫路城の正面扱い、お城的には搦手になる方向で、ネットなどでも写真はなかなかありません。(この方向から撮ろうとするとドローン撮影しかないですが、禁止されているので絶対にだめですよ。)左の画像はグーグルアースの過去画像でポリゴンでの再現になっています。(現状画像は、天守修理の覆いがかかったもので更新されていないです。)「北腰曲輪」の「ホの櫓」(二階建)の屋根の位置が異なりますが、図面で確認するとグーグルのポリゴンが間違っており、東京マルイの位置で正解です。

 グーグルアースの画像は、現在作成している徳川大坂城の図面づくりに多用していますが、衛星からのものですから、どうしても歪がでてしまったりするので、全面的に信用することはできません。特にポリゴンは写真でなく誰かが作製しているので間違いもあるところです。

 東京マルイ姫路城北腰曲輪もう少し詳しくみてみると、ホの櫓の1階部分の唐破風もあり再現しようとしてあるのですが、屋根の最上部までの高さを図面との照合すると壁面の高さが足りないのです。模型の高さ(北腰曲輪地表面から)は約27㎜となっていますが、姫路市立城郭研究室の断面図には、35.26尺とあり、約10.7mで1/350では約30㎜となり、本物に比べて模型は低いです。2階部分の壁面の高さ足りないものと思われます。

 お城プラモ的には、あくまで天守が主人公で、周辺の櫓などは「引き立て役」ってことでしょうが、この北腰曲輪は、曲面で構成され、ホの櫓に繋がる多聞櫓の屋根の高さも異なるようで、建築物としての造形はとてもユニークで魅力のあるものです。私としてはこだわって欲しかったですね。城郭模型を眺める楽しみは、いろんな角度から眺めて、こんな建築物だったのかと驚かされるところにもありますから・・・

広島城プラモ制作記(広島城天守のディティールアップ)

 童友社のDX広島城の制作の記事を続けます。今回は天守の改造部分の説明を中心に天守の完成にもっていく過程の紹介といたします。%e5%ba%83%e5%b3%b6%e5%9f%8e%e3%83%97%e3%83%a9%e3%83%a2%e3%83%87%e3%83%ab
この天守の改造はロボット、フィギュアをやっておられる「べに工房。」のべにたまさんの広島城ディティールアップ記事を参考にさせていただいています。%e4%b8%80%e9%87%8d%e7%9b%ae%e3%81%ae%e4%b8%8b%e8%a6%8b%e6%9d%bf%e6%94%b9%e9%80%a0
まずは、キットでは再現されていませんが、旧天守図面で確認すると、天守一重目壁の下見板張りの仕様が、縦板張で、二重目以上と異なるため、キットの下見板を削り取る作業を行いました。通常下見板張りでは、下の板(羽目板という)に上の板を被せるように重ねていきます。(これを鎧張りといいますが)さらに、この羽目板の上から縦に「押し縁、さらら子」という木材で押さえる形式となっています。ところが、旧天守一重目は、この羽目板が縦に張られていて、羽目板の継ぎ目に縦に押し縁で押さえる形式であるようで、特異な下見板であったようです。
ここの改造は、この広島城プラモデル制作の最大の難所で、イエローサブマリンの0.14mm厚0.5mm幅のプラストライプというプラ材を縦半分に切って0.25㎜幅にして、1本ずつ張り付けていく作業で、なかなか垂直、かつ並行にそろってくれないので疲れ果てました。%e5%ba%83%e5%b3%b6%e5%9f%8e%e5%a4%a9%e5%ae%88%e7%aa%93%e4%bd%8d%e7%bd%ae%e6%94%b9%e9%80%a0

 次に、キット北面(お堀側の幅広の側面)二重目西寄りの窓で、一重目の窓の上、同じ位置にありますが、旧天守一重目平面図と二重目平面図をよく確認すると窓一つ分西側に寄せなければなりません。同じく西面(お堀側の狭いほうの側面)の二重目の窓も左右ともに窓一つ分外側に寄せなければなりません。(写真ではそれぞれ、キットの窓を切り取って、もうひとつ買ってあるキットから、白いパーツを移植しています。)ちなみに写真で確認する限りでは、広島城に展示してある広島城天守模型も、この二重目北面窓に関しては位置が誤っていると思います。%e5%ba%83%e5%b3%b6%e5%9f%8e%e5%a4%a9%e5%ae%88%e5%9b%9b%e9%87%8d%e7%9b%ae%e5%b1%8b%e6%a0%b9%e6%94%b9%e9%80%a0

 天守の外見に関する改造はあと一つあります。キットでは四重目屋根が正方形となっていますが、図面で確認すると南北辺と東西辺の長さが74.5:69の比率です。東西の辺の屋根を3㎜切り縮め、最上階(これは正方形)が入るように屋根を一部を削り、屋根裏を4重目の壁に入るように削ることで対応しました。屋根の四方から上がってくる隅棟(すみむね)が欄干の四方の角につながっていないのが分ると思います。%e5%ba%83%e5%b3%b6%e5%9f%8e%e5%a4%a9%e5%ae%88%e6%9c%80%e4%b8%8a%e9%9a%8e%e5%a1%97%e8%a3%85

 基本の外形ができたので、ディティールアップです。それ以前に正確に塗装するのも非常に大切なのは言うまでもありません。手をいれるために、キットの天守各面から五重目をカットしています。(そもそもキットの廻縁に床板がないので追加するためもあります)天守最上階には、キットにはモールドされていませんが下見板張りがあり、真壁造りで柱や梁も大きな特徴となっており、特に四方の柱は省略できないところです。そして、この広島城キット塗装の最難関は華頭窓の塗りでしょう。小さな面相筆で、色がのっているのかどうかわからないぐらい思い切り薄めた白木色の塗料を少しずつ「のせて」いきます。(まあ、時間かかりますけど、お城の顔の部分なので、じっくりいきたいところです。)
ところで、上記のごとく、いろいろと手を加えて実物の旧天守の城郭模型を作ったのですが、実物と大きく異なっているのは、この華頭窓でして、正直言って図面と比べると一回りオーバースケールです。(悲しい・・・)%e5%ba%83%e5%b3%b6%e5%9f%8e%e5%a4%a9%e5%ae%88%e5%b1%8b%e6%a0%b9%e8%a3%8f%e6%96%b9%e6%9d%96%e8%bf%bd%e5%8a%a0

 私のお城プラモは、下から見上げて撮影することも前提にしていますので、屋根の裏も、けっこう重要ポイントでして、広島城について言えば、古式な方杖(ほおづえ)は追加しておくべきでしょう。キットにもモールドされてはいるのですが、控えめで短すぎるのと、面になっていて棒にはなっておりません。なのですべてカットして、プラ棒で付け替えしました。これもすべての屋根ですので、時間はかかります。%e5%ba%83%e5%b3%b6%e5%9f%8e%e5%a4%a9%e5%ae%88%e9%b3%a5%e8%a1%be%e8%bf%bd%e5%8a%a0

 ずいぶん前に見て、見つけることができないのですが、プラモ城郭模型を作成されていた方のホームページにお城プラモデルの作成の何か条かの作法が掲げられていて、そのうちの一つに「鳥衾(とりぶすま)を追加すべし」というのがありましたね。鬼瓦のあたりにドリルで穴を開け、0.5mmの真鍮棒を瞬間接着剤で固定、爪切りで長さをそろえてカットしています。ドリルのあたりをつけるのが難しかったです。%e5%ba%83%e5%b3%b6%e5%9f%8e%e6%ac%84%e5%b9%b2%e3%82%a8%e3%83%83%e3%83%81%e3%83%b3%e3%82%b0

 欄干も、キットのものを薄く削り使っていたのですが、ライオンロアというメーカの日本軍艦用汎用手すりのエッチングパーツのピッチが合うことに気づき、2枚重ねで利用することにしました。
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 各窓の突上げ戸(0.5ミリ厚のプラ板)を各窓に付けていきます。つっかえ棒は、0.3ミリの真鍮棒を切って、これも瞬間接着剤でとりつけています。(写真は突上げ戸のエッジを塗装していないので白いままです。)あと、モールドでは短く飛び出していないので、屋根下の四方に出ている隅木も追加しています。1/350は小さなスケールですが、艦船などのジャンルと比較すると、まだまだ、お城プラモもディティールアップの余地があると思います。小さな城郭模型の世界をのぞき込んで、当時の風景に思いをはせるのは楽しいものです。もちろん作り込みが甘ければ、とたんに興覚めしてしまいますけど・・・%e5%a4%a9%e6%98%8e%e5%85%83%e5%b9%b4%e5%a4%8f%e5%ba%83%e5%b3%b6%e5%9f%8e%e5%a4%a9%e5%ae%88